記録

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雨上がり

雨が降っている。明日もこの雨は降り続くのだろうか。雨が上がったことに気がつく好きな瞬間というのがいくつかあって、たとえば地下鉄が地上に出た時。映画館を出た時。鳥の鳴き声が聞こえてきた時などだ。地下鉄が地上に出た時と映画館を出た時は世界が目の前でパッと変わったような印象で、鳥の鳴き声が聞こえてきた時は晴れが徐々にこちらに近づいてきたような印象になる。どちらもとても好きな雨上がりに気がつく瞬間だ。

先週、『あのこは貴族』を観た。それからというものこの映画のことを思い出さない日はない。それほど素晴らしい作品だった。物語の中に悪い人を置かず、社会構造と同時に個人を描いていたのがとても良かった。社会構造を描こうとした時に、その中にいる人たちが記号的になってしまうことが多々あるがそれをうまく回避し、たしかにそこに存在する個人を映画の中に作り出していた。それは、細かい演出と役者が演技で表現するゆらぎがばっちりとはまり合っていたからだ。特に、水原希子はこんなにも素晴らしい演技をするのかと驚いた。門脇麦高良健吾石橋静河も本当に良かった。お茶を淹れる際に湯ざましをしていたり、座る瞬間にスーツのボタンを外したりといった所作もハッとさせられた。なにより、門脇麦が道路の向こうの人に手を振るシーンは誰もがこの映画の忘れがたい瞬間として挙げるだろう。超えることのできない分断はたしかに存在するのかもしれないが、しかし見つめ合い手を振り合うことができるかもしれない。そんな可能性に胸を打たれた。タクシーと自転車の対比や、空間の中での高低差などの映像的な演出も冴えていて、本当に隅から隅まで意味を持たせて作り上げていた。ラストシーンの、階段を降りきっている人、途中まで降りている人、降りていない人、という人物の置き方とかもたまらない。もう一度観たい。

月曜まで小田尚稔の演劇『是でいいのだ』が上演されている。この作品は、小田さんの作品の中でも特に好きな作品で、これまでに劇場で4回観ている。それほどまでに好きなのだ。3月11日の東京を描いた作品で、孤独や寂しさをまさに「是でいいのだ」と肯定してくれるような力を持っている。本当におすすめの演劇だ。なにより、毎年この時期に上演し続けていることが意味のあることであり素晴らしい。

最近、アオモジという木の枝を買った。

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この緑の粒から白い花が咲くらしい。絶対可愛い。しかし、最近の寒さのせいか1週間以上経ってもなかなか咲く気配がなく不安になってきた。はやく春よ来い。

夜にラジオを聴いていたら不意にサニーデイサービスの「夜のメロディ」が流れてきて泣きそうになった。大好きな曲だ。


サニーデイ・サービス - 夜のメロディ