記録

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一生枯れさせない

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このペン、今朝借りたままで。すみません

あっ!どこかで無くしたかと思ってたんです!よかった。

日がすっかり沈んで、室内と外の境目のぼんやり薄暗い場所でかわされたほんの数秒の会話に、どうしたって喜びを感じてしまう。アルバイト先に毎日来る佐川さんは、ここ数日、寒さのせいか手袋をしている。今朝、荷物受け取りのサインをするためペンを借り、そのまま返し忘れてしまった。夕方、集荷の際に返すと、失くしたと思っていた物が思わぬところから現れたその意外さに喜び驚いていた。毎日顔を合わせているが、普段は業務的なやり取りしかしないその人のつかの間の感情の露出に嬉しくなってしまった。人との付き合いは、深ければ深いほど良いと言われるような世の中で、ペンの貸し借りという表面だけの交流に、その日を締めくくるには相応しいコミュニケーションを取った気になっている。美容院での表面だけのコミュニケーションには心底嫌気がさすのだが、寒く薄暗い、ダンボールに囲まれた室内と外との境目で行われた会話はとても愛おしい。

今日の夜は、カネコアヤノ単独演奏会2019「さいしん」を聴きに行った。裸足で舞台に立つ彼女の歌う、地に足のついた力強い日常に胸を奮わせた。僕は、高らかにかかげられた大きな声の日常は嫌いだ。そんなところに日常なんてない。だから、言葉にされ、作られた丁寧な生活なんてものは生活でもなんでもないと思っている。カネコアヤノの歌には、日常が、生活がある。しかし、その日常は生活は、血の通った確かなものなのだ。「きっと大丈夫になる」「大丈夫な気がしてる」なんて曖昧な言葉がカネコアヤノの歌にはあるが、この漠然とした、けれども前を向いた祈りのようなものの連続が生活なのではないか。だから、「ごあいさつ」という曲がとても好きだ。気分が良いので歌詞を全て引用する。

君のなんでもない話を聞くフリしながら
こんにちはって意外と言葉で言わないとか考えている 意味はないが
今となりの君のまつ毛がおちるのを
見逃さなかったよ

手帳の書きそびれ今月沢山あったな
きっと、いつかは、と願いと祈りは続いてゆく

どうでもいいね 意味はないし
でも救いも愛も信じていられると
毎日楽しいよ

消えたお気に入りの栞の行方も気にならないな
新しいものを買いに行こうよ
しあわせだよ今
となりの君のまつ毛が落ちるのを
見逃さなかったよ

日常の愛おしさを「となりの君のまつ毛が落ちるのを見逃さなかったよ」という瞬間に集約させていて痺れる。

ライブでは、好きな曲の「とがる」を聴けて嬉しかった。

今夜も月がきれい
それだけでしあわせ
あなたの花は枯れない
一生枯れさせない

かわる!かわる!
かわる!かわる!
かわってく景色を受け入れろ

いつだって苦しいよ
だけど今日はたのしい
あなたの花は枯れない
一生枯れさせない

穏やかな日々は良い
だけどたまに 飽きる
愛が花束になる
一生枯れないやつ

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 2時間のライブで10分間の休憩あり、アンコールもなしで、なんとなく過剰さのないそういうところも好きだった。これからもずっとカネコアヤノを聴き続けいく。この映像を何度も何度も見ている。なんという力強さよ。

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 なんてことないペンの貸し借りをして、夜には良い音楽を聴いて、真夜中に1日の振り返りを書く。寝る前に、明日は早起きできますようになんて祈るそんな生活。ずっとずっと続いてくれ。