記録

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2018年の終わりに

もう年末なので、そろそろ今年を振り返ろうと思う。なにかを振り返る時は往々にして、大きな出来事ばかりが目に入る。まして今年はあまりにも色々なことがあって、そのことに目を向けてしまいたくなる。しかし、その大きな出来事の影に隠れてしまっていることや、隙間にあったことの方が実は大事だったりするかもしれないのでそんなことを書いていく。とか格好のいいことを言ってみたが、今目の前には、口座残高664円というどうしたって抗えない問題がある。昨日、家賃の支払いが今日だったことを思い出して引き落とし口座を確認したら8千円足りないことに気がついた。手持ちのお金は5千円しかなく、なんとか他の口座から3千円をかき集めてこれで足りるだろうと今日を迎えた。そして残高を見たら664円になっていた。お財布には一銭も入っていないため、アルバイト先への電車賃さえも出せないことに朝になって気づきとても焦った。クレジットカードを持っていて本当によかった。急いでApple Payでsuicaに登録し、事なきを得た。とにかく僕は今、現金がなにもない。お金を持ち歩かず全ての支払いをカードなどで済ますといえばスマートで今っぽくて聞こえはいいが、シンプルにお金がないのでとても格好が悪い。こんな現実を前にして、1年のことを振り返っていく。たった1年だけれども振り返るのは途方も無いのでとりあえずは最近のことについて。

最近の出来事といえばクリスマス。クリスマスの思い出は、幼稚園の頃にキリスト誕生のお芝居をしたことが記憶にある。幼稚園の年中から年長まではマリア幼稚園というキリスト教系の幼稚園に通っていた。園長先生はいつも神父の格好をしていたし、教室には十字架があった。お芝居で僕が演じたのは兵隊の役だった。槍をドンドンと地面に叩く演技をした覚えがある。むしろ、それしか覚えていない。サンタクロースのことは、小学校6年生になる前ぐらいまでなんの疑問も持たず受け入れていた。むしろ親に、もう分かってるでしょ?と言われて分かっているふりをしたぐらいだ。そんな時が訪れるかは分からないけれど、子どもの枕元にプレゼントを置く瞬間はたまらないものがあるのだろうなと思う。真夜中、子どもの寝顔を横目にそっとプレゼントを置く。その時にはもう、翌朝目を覚ました子どもの喜ぶ姿を思い浮かべている。そして、朝になって本当に子どもが喜ぶ。いや、そんな予想通りにはいかなくて、欲しいものが違った子どもは不服そうにするかもしれない。実際に僕はプレゼントに不服そうな態度を示してしまった時もあった。24歳のクリスマスイブは、高円寺の七面鳥でカツカレーを食べた。

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クリスマスに七面鳥を食べたのではなくて、七面鳥という名前の中華料理屋でカツカレーを食べる噛み合っていないちぐはぐ具合が面白い。クリスマスのスーパーは、パーティの準備に備える人で賑わっていた。そこで見つけたのがこのシャンメリーだ。

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可愛くて一目惚れで買ってしまった。さくらももこさん亡くなってしまったなあとふとした瞬間に思う。今年を振り返ったときに、一番ショックな誰かの死かもしれない。クリスマスの前後には、月刊根本宗子『愛犬ポリーの死、そして家族の話』、東葛スポーツ『平成のいちばん長い日』、中島哲也『来る』を観た。『来る』はハイバイの岩井さんが脚本に参加しているだけあって、親族の集まりや人間関係の嫌なところを煮詰めた感じが面白かった。

こんな調子で最近のことばかり書いていたら一向に一年の振り返りができない気がしてきたので、強引に振り返ることにする。とりあえず今年観たテレビで1番どきりとしたというか、誰かの人生を垣間見たのが10月3日放送の『家、ついて行ってイイですか?』だった。その回に登場した大学生の男の子の父親は、彼が中学生の時に亡くなった。自分のお腹を包丁で刺して自殺したという。父親は、事故に会い後遺症を患ってからそれまでの優しい性格が一変してしまったらしい。そんな父を見て、当時は事故で死なずにいてくれて良かったとは思えず、父親に嫌気がさしていた矢先の自殺であった。自殺する前日にも暴言を吐いてしまい、どうしてあんなことを言ってしまったのだろうと、とても複雑な気持ちを抱えたまま今に至ると話していた。そして番組スタッフが、お父さんに会いたいと思ったことはある?と聞いたときの答えが、テレビが作り出そうするドラマを現実に生きる彼にとっての切実さが超えた瞬間だった。

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父に会い相談したいその困ったこととは、彼が包茎であるということだったのだ。父親が腹を刺して自殺したという壮絶な過去をもろともしない現実の切実な悩みよ。生きるってこういうことだよな、と思った。

生きるといえば、今年のベストラジオは9月16日放送の神田松之丞の『問わず語りの松之丞』だった。奥さんの出産、ストリップなど生と性が入り乱れ、さらには過去の後悔が押し寄せる緊迫感のある語りは本当に素晴らしかった。最後のオチである、その話が数時間前の出来事であるスリリングさは鳥肌が立った。何度聞いても素晴らしく10回以上は聞いている。

今年のテレビ番組で1番笑ったのは、『相席食堂』だ。全ての回が面白い奇跡のような番組だ。「ノルディック親父」や「飛ぶぞ」、「陰根」などのワードにどうかしてるんじゃないかと思うほど笑った。いつだって千鳥は面白い。切実に『キングちゃん』復活を願う。

ネタとして何度も見たのは、M-1準々決勝のDr.ハインリッヒの漫才だ。あとは、街裏ぴんくのネタもよく見た。

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Dr.ハインリッヒにしろ、街裏ぴんくにしろ、どちらも現実から飛躍した話なのにも関わらず、妙にリアリティがあるところが好きだ。街裏ぴんくのこのネタで言えば、ロバを殴るバイトという意味の分からない仕事の場所が四ツ谷駅の麹町口であったり、登場人物の名前が梅塚や雲動回などなぜか明確に決められている。上手いネタってこういうバランスの良さなんだろうなと思う。

音楽は、とにかくカネコアヤノの『祝祭』が素晴らしくて何度も聴いていた。折坂悠太の『平成』も、シャムキャッツ の『Virgin Graffiti』も好きで繰り返し聴いている。今年行ったライブは小沢健二とceroだけだ。

映画はそれほど観れていないのだけれど、『リズと青い鳥』のあのセリフなしの冒頭シーンが忘れられない。『スリー・ビルボード』も今年観た映画なのかと驚いた。『スリー・ビルボード』は人生ベスト級の作品だった。ドラマはなんてったって、Netflix『ベター・コール・ソウル』シーズン4が素晴らしかった。毎話毎話キレッキレのショットと演出で痺れっぱなしだった。

本は、あまり読めない年だった。友田とん『百年の孤独を代わりに読む』はなかなか面白かった。

演劇は、ケラリーノ・サンドロヴィッチとんでもないなと再確認した年だった。小田尚稔さんの作品をいくつも観れたのも良かった。『高架線』も『是でいいのだ』も素晴らしかった。ハイバイ『ヒッキー・ソトニデテミターノ』は今年唯一2度観に行ったお芝居だ。それほどに個人的に迫るものがあった。

かなりの駆け足で、今年面白かったものを振り返ってみたわけだが、恐らくあの時仕事を辞めていなければこういったものにまったく触れることはできていなかった。実際に、4月5月6月と、チケットは買ったけれど観に行けなかった舞台やライブなどが山のようにある。本当に仕事が辛かった。辛かったなんて簡単に言いたくないのだけれど、もうそう言わずにはいられない。新卒で入社してすぐから休みなしの15連勤や毎日のような終電帰り。まともに仕事を教えてくれる人はおらず、となりの部署の人から心配される始末。自分でもまさか辞めるとは思ってもいなかった。なんてことない空がとてつもなく綺麗に見えていたのは、地獄から見上げていたからなのだ。仕事を辞める前や後、何人もの人が優しく声をかけてくれたし大きな声で笑ってくれる人もいた。これまでそんなこと思ったこともなかったけれど、人と関わるって話すって生きていく上で必要なことなんだなと思った。

さて、2018年もまもなく終わりそうな現実に立ち返れば、目の前にあるのは結局仕事を見つけられずフリーターであるという事実と深刻なお金不足だ。お金がないのと電車に乗るのが辛いので移動の多くを自転車にするようにしたのも今年の大きな変化だ。東京を自転車で走るのはとても気持ちいい。ころころ変わる街並みや、緑意外に多いよなあなんて思ったりする。今みたいな季節は寒くてハンドルを握る指先が凍える。この指先の寒さも、今年の思い出だ。きっとすぐに忘れてしまう思い出で、忘れてもいい思い出だけれども、いつかふとした瞬間に思い出したりできればいい。坂道を自転車で下った時の指先を。来年はどんな1年になるのだろう。今となってはもう、どんなことが起きようと受け入れる。でも、少しでも目の前が拓けて明るい未来が見えますように。映画も演劇も本も音楽も、好きなものを好きでいられますように。

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