記録

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そこに水路があった

最寄り駅から家まで歩く道は、登りから下りになっている。登りの一番高いところには、その高さのまままっすぐの道が横に通っている。その道を渡るとまた下りになる。なぜその道の場所だけ高台なのだろうとずっと思っていた。地名的に谷がつくし、谷があったからそういう地形なのかなと一人で勝手に結論づけていた。しかし、「東京時層地図」という最強のアプリを使って100年前の地図を見てみると、その道の場所は「新上水」と書かれ水が流れているようだった。青い点が現在地であり、昔の地図上では水の上に立っていることになる。

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新上水とは?と調べてみると、なんとその道は今の言い方では「玉川上水新水路跡」ということになっていた。もっと調べてみると、ここが高台になっている理由は、水を流すために人工的な土手が作られていたからだったのだ。ちなみにこの道が現在の玉川上水新水路だ。

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たしかにずっと真っ直ぐの道なので水が流れていたと言われればそうも見えてくる。この道沿いには「ずい道公園」という公園が二つある。ずい道ってなんだろうとずっと疑問に思っていたのだが、水道のことか!と納得がいった。今ではこの道には都営住宅が多く並んでいる。その裏側はすぐ階段であり、高さがあることがわかる。

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さらに、道の下には道路が通っており、そこのトンネルの造りが近代っぽいのがなにかしらの名残を感じさせる。

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せっかくだからと、100年前の地図を見ながら新上水沿いを歩いてみることにした。まず気づいたのは、地図上の水路の上に一定の区間で橋が架かっていることだ。このかつて橋の架かっていた場所を目視すると、今でも両端に道がある。普段見ている景色が過去のものと重なり感動する。ちなみに、幡ヶ谷の六号通り商店街は、六番目の橋が架かっていた道だからそういう名前らしい。色々なことに感心しながら歩き進める。笹塚を過ぎたあたりで大きな道にぶつかり、かつての水路の跡が突然狭くなった。

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水路を横切る道路を上から撮った。かつては右から左に水路があったはずだ。

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これまでとは打って変わって道は狭くなる。

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細い道をぐんぐん進んでいく。この下に昔は水の流れがあったのだ。

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明大前の手前あたりで、大きな建物にぶち当たる。

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東京都の水道局の施設だ。ここに水路があったなどと言われなければ気づきようのない何の変哲もない道を歩いてきたわけだが、水道局というかつての水路を継ぐ建物に行き当たった。地図によると、かつてはここから玉川上水が「玉川上水新水路」へと分岐していた。青い場所が水道局のある場所とかぶる。

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そのポイントに水道局があることにやけに感動してしまった。今回の目的は、新水路を辿ることだったので、とりあえずの散歩は終えた。すると、近くに神田川を見つけた。いやはや、どこにでも神田川はありますなと川沿いを歩くことにした。

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紅葉綺麗だなと思いながらふと、「東京時層地図」で90年前の地図を見ると、川のすぐ脇に養魚池を見つけた。これは、今はどうなっているのだろう、行くしかないとすぐに向かった。養魚池の上に立つ。

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そこは、もうただの住宅街となっていた。

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ただ嬉しかったのが、養魚池の3つの区分けは、現在の住宅街でも健在であったことだ。

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かなりの距離を歩き、時間も時間だったので、ここから引き返し、帰宅した。前回の散歩は神田川沿いを歩いた。

ただ歩く - 記録

今回は、「玉川上水新水路跡」の上を歩き、かつての水の流れを想像しながら散歩をした。過去の風景の面影が垣間見え、現在と重なる瞬間がたまらなく好きだ。だからきっと、柴崎友香さんの小説を読んでいるのだし、リチャード・マグワイアの『HERE』に感銘を受けてしまうのだろう。