記録

記録

見えない水と蜘蛛食べ人

僕は、小さい頃の記憶がほとんど思い出せない。幼稚園は、マリア幼稚園というキリスト教系の学校に通っていたらしい。家族は無宗教なのだが、田舎であったため、その地域には幼稚園がそこしかなかったのだ。そんな話を親に聞かされると、ぼんやり当時の風景を思い出すことがある。それは、教室の前に大きなキリストの像がある風景だ。あの、十字架に張り付けにされている例の像だ。この記憶が事実なのか、それともマリア幼稚園という言葉から連想されたねつ造された記憶なのか定かではない。もう一つ思い出すことは、見えない水をいつも頭にかけられていた記憶だ。毎日一列にならんで、先生の前で頭を下にして見えない水をかけられていた。そしてその後、白いドロップをもらうのがお決まりだった。そのドロップはとても小さくいつも甘かった。なぜだか、そのドロップの味と見た目だけは詳細に思い出すことができる。もう一つだけ記憶にあるのは、蜘蛛を食べる少年がいたことだ。その少年は、いつもべランダの隅に座り、蜘蛛を食べていた。そして、蜘蛛の糸がのどに絡まると言っていた。見えない水を頭にかけられ、蜘蛛を食べる人がいた幼稚園で僕は育ったのだ。

夜にこんなどうでもいいことをふと思い出した。