記録

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カステラと牛乳

自分は今、海外旅行へ来ているのだという設定で街を歩くことがある。ここが新宿かー、ここが渋谷かー、といった感じで東京へ観光に来ている外国人というよりも、まったく知らない国にいる気分でキョロキョロする。しかし、その時自分は日本人ではなく、どこの国の人でもない。だから、すれ違う人を見て、海外の人だー、とだけ思う。毎日のこの暑さから、さながら東南アジアのどこかの国にいる気分になれる。とか思っていたが、これまで行ったことのある、タイ、ベトナム、台湾のどこよりも最近の日本は暑いので、設定とか抜きで本当にどこでもない国にいるみたいだ。この遊びをしていると、ビルがたくさん建っているだけで感動するし、電車から見える風景にも、どきどきする。いつも見慣れているものを知らないていで見るのは、お金のかからない究極の遊びだ。海外旅行へ行った時に、地元の人にはなんてことないような路地にときめき、思わずカメラを向けてしまう感覚と同じだ。

三連休は、クーラーの効いた部屋でずっとだらだらしていた。この怠惰さは、暑さのせいにしておく。久しぶりにカステラと牛乳を食べた。この組み合わせは最高って分かっているのに、いざ食べるとその最高を軽々と超えてくる。美味しさが常に更新される。安いカステラと普通の牛乳でこんなに美味しいのだから、高級カステラ×搾りたて牛乳だったらどうなってしまうのだろうと思うが、大して変わらない結果がぼんやりと見える。ツイッターで頻繁に、例の文体で何かの美味しい食べ方やレシピが流れてくることがある。一見美味しそうなので作ってみることがあるのだが、大体美味しいとは言えない。味の好みは人それぞれというよりも、単純に表現を盛りに盛っているのだろうなと思う。でも、もし、世の中にカステラと牛乳を一緒に食べる組み合わせが存在していなくて、ツイッターでその組み合わせを知って、いざ食べたらあまりの美味しさに天に召されると思う。だから僕はきっと訪れないであろうその瞬間を求めて、またよくわからないレシピを試してしまう。

髪を切りに行った。自意識過剰なので、一度シャワーを浴びて髪を洗ってから美容院へ行く。とても暑い日で、汗をかいた状態で髪を切ってもらうことが恥ずかしく、なんとか道中汗をかかないように頑張るも、汗をかかないための頑張り方がわからず、結局汗だくになる。昨年までは、なんのお仕事されてるんですか?と聞かれた時に、あっまだ学生なんです、みたいなやりとりがめんどうで、社会人になってからはそれから解放されたかと思いきや、今はフリーターだ。美容院でスムーズに会話ができる日は一生訪れない。