記録

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ハンガーにかかったキーホルダー

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夜、駅から家までの帰り道、あまりの寒さに早く家に着きたいという一心でハッハと白い息をもらしながら走った。家へ着く直前、後ろからギーギーと音がしたので振り返ると、立ち漕ぎをした女性がこちらへ近づいてそしてすれ違い前へと消えていった。きっとあの女性も、この寒さから早く逃れたい一心で立ち漕ぎをしていたのだろう。この寒さは、誰もが家路を急ぐ夜だ。

最近、あまりブログを書けなくなってしまった。自分の記録のために書いているわけであって、特に誰かが困るわけではないが気持ちのどこかで書かなければという焦りがあったりする。それでもやっぱり書けないし書くことがない。怖いぐらいになにもない。ただ仕事へ行って疲れて帰ってきてぐだぐたして日々が過ぎて行く。そんななにもないような日々の中からなにかを拾い上げて広げて書く元気も体力もない。仕事をしていなかった時期は、なにもしていない無為な時間やただただ散歩をしたことなどを書いていて、その何もなさ自体を書きたかったのだが、今はそれすらも書けない。しかし、それでもなんとか最近のことを振り絞って書く。

1月の演劇始めは、阿佐ヶ谷へナカゴー『ひゅうちゃんほうろう-堀船の怪談-』を観に行った。言わずもがなナカゴーは最高に面白い。まずもって物語の軸と周辺のディテールがしっかりしているので、どんな展開になろうとも受け入れることができるし笑うことができる。手を繋ぐというワンアクションが怪談にもなるし、結束の印にもなる。個人的にとても笑ったのは、「八百屋行こう」というセリフと、妖怪だと思ってめちゃくちゃ殴った後に本当は人間だったんじゃないかと不安になるシーンだった。ナカゴーを観た後、サイゼリヤへ行った。噂の羊串を食べてやろうと意気揚々と「羊串のダブルで」と注文したら品切れだった。

2月に入ってから演劇は、ロロの『四角い2つのさみしい窓』を観に行った。どこまでもポップなのにあらゆる部分でとてつもなく巧みで本当に素晴らしかった。境界線が重要なテーマになっており、舞台美術として劇場の中に劇場があるわけだが、その劇場は壁や境界線を意味するプロセニアムアーチのある劇場なのだ。物語が進むにつれ、あらゆる境界線が融和していく。嘘も本当も混じり合っていく。終盤、文字通り劇場は解体され、境界線はなくなる。劇場の解体に連動するように、あちらとこちら、すなわち生と死の境界線も緩やかなものになっていくのだ。ポップな語り口の中でこんな所まで辿り着いてしまうのだから本当に凄い。

観終わって、三浦さんに『生活の途中で』に寄稿していただいてありがとうございましたとお礼を言った。帰りは渋谷まで歩き、そこからバスに乗って家へ帰った。この日は節分で、バスの中には豆を握りしめた幼稚園児がいた。スーパーでサーモンとクリームチーズを買い、家で太巻きを作って食べた。この組み合わせは最強だ。

最近読んで心から素晴らしいと思った漫画は、光用千春『たまご』だ。

 

たまご他5篇 光用千春作品集 (ビッグコミックススペシャル)

たまご他5篇 光用千春作品集 (ビッグコミックススペシャル)

 

 短編集なのだが、1つの作品を読み終わる度に、凄い才能だ…となっていた。どの作品にも私たちの言葉にできない感情が描かれている。喜びでも悲しみでもありながら、喜びでも悲しみでもない曖昧なものがここにはある。ほとんどの短編の主人公は子どもで、どこか大人びた考えをしている。しかしなぜかそこに違和感を感じない。そこが不思議で、なぜなのか表すことができない。とにかく読んで欲しい。光用さんの前作『コスモス』をおすすめしてくれたのがナナロク社の村井さんだったので、『たまご』を読み終わった直後に村井さんに、素晴らしかったです!とラインをしたら、ちょうど今目の前にあります!と写真が送られてきた。すごい偶然で嬉しかった。

映画は、『ジョジョ・ラビット』を観た。ユーモアと戦時中のリアルな側面のバランスが抜群だった。反復がいくつもあったり、徹底して子ども目線からの戦争であったのも良かった。なにより子どもの可愛さとサム・ロックウェルの素晴らしさよ。観終わった後は、良い映画だったなあという感想しかなかったのだが、今これを書きながら思い返すと大好きなシーンばかりだ。お母さんがお父さんになりきるところの可笑しさと哀しさ、そしてそこからのダンス。ウインクが上手にできなくて顔をギュッとするところ。ブリキの着ぐるみを着たままのハグ。好きな女の子への揺れ動く気持ちと少年の決断。そして、再びのダンス。何度でも見返したい。

先週のラジオはどれも面白かった。深夜の馬鹿力で、映画好きが何周もして結局『七人の侍』が好きと言うなら分かるが、特に映画好きでもない人が急に『七人の侍』と言った時は、『グーニーズ』と同じくらいの破壊力があると話していたのに笑った。あとは、爆笑問題カーボーイとしまえん閉園の話題になり、2人の学生時代の話が聞けて嬉しかった。学生時代の共通の思い出を楽しそうに話している回が本当に好きだ。以前、バックトゥーザフューチャーを2人で観に行った時のことを話していてその時もとても良かった。他には、佐久間さんのANN0で機材が壊れ、リアル『ラヂオの時間』になっていたのも面白かった。これは先々週だったかと思うのだが、ハライチのターンでマックでどのハンバーガーが好きかで盛り上がっていたのが最高に楽しかった。僕も誰かとどのハンバーガーが好きかで盛り上がりたい。ちなみに僕は岩井さんが散々馬鹿にしていたダブルチーズバーガーが好きだ。

本は、柴田葵の歌集『母の愛、僕のラブ』が良かった。

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宮崎夏次系の表紙も可愛い。一緒に買った、『ねむらない樹』vol.4に載っていた鈴木ちはね「スイミング・スクール」がとても好きなタイプの短歌だった。感傷的な部分があまりなく、けれどもその瞬間を捉えていた。

今日は、お昼まで寝て喫茶店へ行った。山盛りのスパゲッティを食べた。隣には大学生3人がいて、誰々が可愛いだの付き合っているだの話していた。こういう話が昔から本当にできない。あの子が可愛いとか誰と誰が付き合っているとかの話にまったく興味が持てない。往々にして飲み会での席ではそういう話になるので居心地が悪くなる。山盛りのスパゲッティでお腹を満たし家に帰った。

これから夜勤で、あと数時間したら出勤する。仮眠をとらなければと思いつつ、このまま眠らずに職場へ向かってしまいそうだ。寒さのピークに家を出るのは辛い。裏起毛へ全幅の信頼を寄せていたのだが、ここ数日の寒さでその信頼も下り坂だ。信頼はこちらの一方的な気分次第でこうも容易く崩れてしまうものなのだ。仕事へ行きたくない気持ちでいっぱいだが、職場のロッカールームの僕のハンガーには、このドラえもんのキーホルダーがかかっている。

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可愛くてお店で見かけた時にすぐに買ってしまった。このドラえもんと犬が職場で待っていると思うとなんとか頑張れる。