記録

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ささやかな夏休み

先日、ささやかな夏休みがあったので大阪と京都へ行ってきた。行こうと思ったきっかけは、大阪の本屋「葉ね文庫」さんに自分の本が置かれていることと、もう一つはちょうど大阪で『わたしの星』が上演されていたからだ。

小旅行の当日は、朝7時の夜勤明けにそのまま東京駅へ向かい、新幹線に乗った。夜勤明けで寝ていないため電車の中で眠れるかと思ったがほとんど眠れず大阪へ着いてしまった。まず、西田辺にあるかき氷屋さんへ行った。「カリン」というお店で、前日に慌てて買った雑誌SAVYに載っていて美味しそうだったので向かったのだ。桃のかき氷を食べた。パフェのように桃がたくさん乗っていて美味しかった。このお店にいた、つむぎちゃんという2歳の女の子がとても可愛かった。店主の娘さんらしい。すぐ近くにあった、ホホホ座西田辺店へも行った。古本を何冊か買い、周辺をぶらぶらした。生活感のある古い建物が多かった。

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偶然、また古本屋を見かけ、入ってみると店主らしき人からビール飲みますか?と聞かれ、てっきり買わされるのかと思い断ったら、お中元でたくさんもらっちゃってさ、持ってってよと手渡された。そもそも自分はお酒をまったく飲めないのだが、なんだかその気のよさにすんなりと受けとってしまった。その後、中崎町にある「葉ね文庫」へ行った。店内は、決して広いとは言えないがとても多くの人で賑わっていて、それぞれの人がそれぞれの本を手に取り読んでいてとてもよい雰囲気だった。詩歌が多くを占める書店がこれだけ賑わっていることは、なにかの希望のようであった。そして、ついに、本屋に並ぶ自分の本とご対面である。

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もう素直にとても嬉しかった。店内を見て回り、欲しかった本を手に取って店主の池上さんに話しかけた。こういう時、本当に緊張してしまうのだけれど、とても柔らかい雰囲気の方で、すんなりとお話しすることができた。店内には短冊が飾られていて、お客さんが自由に短歌を書いているようだった。よかったら書いていってくださいと言われたが、とっさに何かをする能力が著しく欠けているので、凡庸な宣伝文句を書いた。偶然にも、岡野大嗣さんの隣に飾られることになった。岡野さんが僕の本を推薦してくださったおかげで、葉ね文庫での取り扱いが始まったのでなんだか嬉しかった。

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それにしても、本当に良い雰囲気の本屋さんで、この空間に置いてもらえていることが光栄でしかたなかった。ここで買った歌集、山階基『風にあたる』がもう本当に素晴らしかった。過剰さのないところが好きだ。

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葉ね文庫を後にして、今回の目的の2つ目である柴幸男『わたしの星』を観に読売テレビ10hallへ行った。その道中、御堂筋線の大好きなホームに出会えた。電灯がシャンデリアみたいになっている。

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肝心の『わたしの星』は、柴さんがそれぞれの土地の高校生たちと作り上げる作品で、2年前に三鷹で上演された際に観に行っている。今回は、大筋は同じだが内容が変わっていた。なにより、関西の高校生たちなので、言葉が関西弁なのがとても良かった。おそらく標準語で書かれていたであろうテキストが関西弁で発されることにより、彼女たちがそこで今生きていることを揺るぎないものにしていた。前説と後説も高校生スタッフが行っていたのだが、その子が自分のブログを読んでくれていて本も買ってくれている子だった。ツイッターでなんとなくその子がスタッフをやっていることは知っていたのだが、前説と後説で姿を見ることになるとは。とてもしっかりしていて、ああ頑張っているなあとそのことに感動してしまった。とにかく、色々なことを含めて大阪まで『わたしの星』を観に行って本当に良かった。

夜は、駅に入っているヤム邸でカレーを食べた。ヤム邸はやっぱり美味しい。駅中にこんな美味しいカレー屋さんがあるなんて最高だ。東京では下北まで行かないとヤム邸のカレーを口にすることはできない。京都にホテルをとっていたので、京都まで移動して倒れるようにして眠った。

翌日は、イノダコーヒー本店へ行きレモンパイを食べた。もはやこのパターンが京都でのお決まりになっている。京都芸術センターで展示を見た後に、再び大阪へ向かった。まずは、話題の「toi books」へ。簡単にぐるっと見回せるほどの店内ながら、まるで自分の本棚を見ているのではないかと思うほどの好きな本ばかりが揃っていた。こだまさんや、木下さん岡野さん、友田とんさんなどお会いしたことのある方の本が並び、居心地が良かった。本を買い、お店を後にして「餅匠しずく」で見た目が美しい上にとびっきり美味しい和菓子を食べた。和菓子に付いてきた冷たいほうじ茶もとても美味しかった。その後は、black birdbooksへ行った。そこでは、小西彩水さんの展示「それじゃ顔がわからないように」が開催されていた。小西さんの漫画は、最高に面白くて大好きだ。作品集の『Ayami Konishi』は、端正な装丁とは裏腹の内容に、初めて読んだときはやられてしまった。

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そして、今回の展示でのグッズのTシャツも手に入れた。

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仕事へ行く時に着ていくなど、もうすでに愛用している。blackbird booksはずっと行きたかった書店だったので、やっと訪れることができた。お店のある場所がとにかく良かった。周辺の写真を撮ったりもした。

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大阪の市内から少し離れた緑の多い場所に本屋があるのが素敵だ。

blackbird booksを後にして向かったのは、万博記念公園だ。ずっと念願だった、太陽の塔の内部の見学をした。1階のみ撮影可だったのであまり写真はないのだけれど、こんな感じだった。

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中心を貫くこの作品も凄いのだけれど、太陽の塔の腕の部分に感動というか圧倒されてしまった。あの未来感は、ぜひ本物を見てほしい。しかも、腕が通路になっていたなんて知らなかった。宇宙空間のどこかであるかのようだった。太陽の塔を出るともう夕方で、大好きな国立民族学博物館は閉まっていたので写真を撮ったりして帰ることにした。

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旅行の最終日は、京都の書店を巡るなどした。誠光社、恵文社、アローントコ、メリーゴーランド京都など、色々な場所へ行った。どこの本屋へ行っても欲しい本がそれぞれにあり、帰りは荷物が大変なことになった。美味しいものもたくさん食べたり、お寺に行くなどもしたが今回は割愛。帰りの新幹線は、高い駅弁を買ってお腹を満たし、幸福のまま家に帰ってきた。

自分の本が置かれているのを見に行くということと、演劇を観に行くことを発端に小さな夏休みを過ごしたが、思わず様々な場所を訪れることができた。関西は、良い書店が本当に多い。今回書店を巡った中では、葉ね文庫の印象がとても強い。もちろん、本を置いてくださっているというひいき目もあるかもしれないが、あの空間にはその場所やそこにある本が好きな人が集まっているという雰囲気があった。広くはない店内の、思い思いの場所に座り、お客さんが本を読んでいる姿が忘れられない。