記録

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Things So Faint But Real

高層ビルやマンションに夕日が当たり、まるで最初からそれが綺麗な橙色の建物だったのではないかと見間違えるような日がある。そういう美しい夕暮れを、人々が行き交うなかで立ち止まって見つめている人がいる。残念ながら僕はそんな人にはなれなくて、誰もいない線路沿いの道をゆっくりと歩きながら眺めることしかできない。

インフルエンザにかかり、しばらくダウンしていた。そのタイミングでアルバイトも週1になり、引きこもりに拍車がかかってしまった。ここ数日は、家から一歩も出ないこともざらにある。なにも起きない日々が続いている。とりあえず来月には生活費が底を尽きてしまうので、なにか単発のアルバイトを探さなければならない。
東京都写真美術館へ『小さいながらもたしかなこと』という展示を見に行った。今回展示されていた森栄喜さんの『Family Regained』は写真集を手にしていたので何度も見たことがあったのだが改めて大きな写真で見ると、その真っ赤な色味とそこに込められた意味により切実さが増す。ミヤギフトシさんの『Sight Seeing/感光』は、暗闇で長い露光時間をかけて撮影されたものなのだが、まるで本当にそこに人がいるかのような写真だった。リアルとはまた違う、しかしたしかに人のいる実感。
引きこもっている間に、アマゾンプライムで『宇宙よりも遠い場所』を一気に観た。とても素晴らしいアニメだった。あらすじは、女子高生が南極へ行く話なのだが、テンポの良さと青春物語としての面白さにあっという間に引き込まれる。これは「距離」を描いた作品だと思った。南極という遠い場所との距離であり、人と人との距離の話でもある。ロロのいつ高シリーズ同様に、「距離」は青春を描くにはもってこいなのだ。好きな場面はたくさんある。例えば、9話ラストでついに南極へたどり着き、報瀬が発した言葉。
ざまあみろ、ざまあみろ、ざまあみろ、ざまあみろ!あんたたちが馬鹿にして鼻で笑っても私は信じた!絶対無理だって裏切られても私は諦めなかった!その結果がこれよ!どう、私は南極についた!ざまあみろ、ざまあみろ、ざまあみろ、ざまあみろ!
南極へ着いた第一声が、感動ではなく「ざまあみろ」なのだ。他にも、11話で日向が高校を辞めるきっかけになった友達へ報瀬が言ったセリフも良い。
あなたたちそのままモヤモヤした気持ち引きずったまま生きていきなよ!人を傷つけて苦しめたんだよ!そのくらい抱えたまま生きていきなよ!それが人を傷つけた代償だよ!今さらなによ、ざけんなよ!
この断固として誰かを許さない態度に共感する。僕は大人になることができないので、許すことが正義であり素晴らしいみたいな風潮はどうしても受け入れることがない。今でもかつて向けられた悪意に「ざけんなよ!」と思っている。10話で、キマリが結月に友達とはどういう存在なのかスマホを見ながら話すシーンも良かった。
でも、なんとなくわかる。画面を見てるとね、ピッて読んだよってサインがついたり、なにか返ってきたり。すぐだったりちょっと時間が空いたり半日後だったり。それを見るたびになんとなくわかるんだ。ああいま学校なんだなあとか、寝てたんだなあとか、返事しようかちょっと迷ったのかなあとか。わかるんだよ、どんな顔してるか。変だよね。私にとって友達ってたぶんそんな感じ。全然はっきりしてないんだけどさ、でもたぶんそんな感じ。
とてもストレートなセリフだ。しかし、そこにいない誰かのことを想像するのはやはり特別なことなのだ。良かった場面を上げればキリがないのだが、やはり12話は特別に素晴らしくそして辛い。観て確かめてほしい。とにかく全話通して、まったく飽きさせないし、なんというかとても誠実な作品なのだ。去年のアニメなのに今さら熱くなっている自分が恥ずかしい。
明日も休みだ。やはり、就職先を見つけようと思う。本当のところは、書くことを仕事にしたいと思っていたが、今の僕にとってそれは難しいのではないかと思っている。いや、本音を言えば仕事にしたいですけれども。昨年末からここで書いた3年分の日記をまとめていたのだがやっと終わりの目処が見えてきた。振り返って読んでいると、いつも同じようなことを書いていて笑ってしまう。きっと5年後も10年後も同じようなこと考えて書いているんだろうな。

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