記録

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『キリング・アンド・ダイング』や羽衣『愛死に』のことなど6月5日〜6月11日

月曜日

お昼から面接。就活してて気付かされたのは、世の中で求められる「普通」ってめちゃくちゃ高いところにあったのだなということに尽きる。これまで自分のことを普通の人だと思ってたのだけど、よくよく考えるといわゆる普通の人だったらサークルとかに入って楽しそうな大学生をやっているはずだ。それが今の普通というものなのだ。自分でも気付かない内に「普通」から遠く離れてしまっていたらしい。


火曜日

深夜ラジオ好きとして佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』を読んだ。アルコ&ピースのオールナイトニッポンががっつり小説の内容に関わってくるので、読みながら思わず笑ってしまう。まさかビッグ・テキサンという文字を小説の中で目にする日が来るとは。くりぃむしちゅーのオールナイトニッポンも少しだけ登場する。ツイッターであったりニコ動なども重要な要素として作中で描かれていてまさに現代にしか書かれない小説だ。10年後になんとなく読もうとした人にとっては、意味のわからない固有名詞だらけになるのではないかと思う。しかし、正直なところあまりにもくだけた文体に読みにくさを感じてしまった。


水曜日

この日は朝から面接。午前中に終わったのでそのまま新宿に向かい石井裕也監督の『夜空はいつも最高密度の青色だ』を観た。最果タヒの詩集をどんな風に映画にするのだろうか思っていたけれど、想像の何倍も素晴らしい作品だった。この時代、特に東京という街を見事に掬い上げていた。ある意味で現在の新宿と渋谷の記録映像にもなっている。池松壮亮石橋静河の演技も素晴らしくて、個人的には何度かある石橋静河が歩きながらくるくると回るシーンが好きだった。ピカデリーで観たのだけど、エスカレーターで降りる時に外に広がる新宿の街並みを目にして不意に泣きそうになってしまった。

 

木曜日

この日も面接。夜はこまばアゴラでコトリ会議『あ、カッコンの竹』を観た。初めて観た劇団の作品だったのだけど面白かった。しかし上手く言語化できない。面白かったことは確かです。


金曜日

なんにもしていない。


土曜日

久しぶりに神保町へ行った。適当に古本を見て回って、三省堂坂元裕二が特集されている『熱風』を手に入れ、ずっと読たかったエイドリアン・トミネの『キリング・アンド・ダイング』を買った。

キリング・アンド・ダイング

キリング・アンド・ダイング

いい値段がするのでなかなか手を伸ばせなかったのだが買って損はなかった。6つの短編が入っていて、そのどれもが胸を締めつけるような切なさを持っている。個人的に好きだったのは、ポルノ女優とそっくりだという理由で人生がうまくいかない女性を描いた「アンバー・スウィート」という作品と表題作の「キリング・アンド・ダイング」でした。どの作品も淡々とコマが進んでいくのだけど、その一コマ一コマの間には時間の経過や感情の動きが潜んでいる。とにかくおすすめです。


日曜日

芸劇でFUKAIPRODUCE羽衣『愛死に』を観た。これまでにいくつか羽衣の作品は観てきたけれど今回が一番だったかもしれない。羽衣はいつでもとてつもない熱量で生と性を描いてきた。しかし今回はそこに色濃く死というものが加えられたことによって、より一層燃えるような生を見た気がする。大きな物語的なものがないのも素晴らしいです。