記録

記録

終わらない1日

午前4時には空は明るくなって、朝6時の朝日はとても眩しいことを知った。2週間前から新しい仕事が始まった。夜勤が週に何度かある仕事で、夜の21時に出勤して翌朝6時までなんて日が度々ある。先週は、そんな日が3日連続であった。夜に家を出て朝に家に帰ってきて昼間に寝てまた夜に家を出る。夜に寝ることによって1日の終わりを体感していた身としては、終わらない1日が永遠に続いているかのようだった。ずっと1日が延長されているのだ。

新しい職場の休憩室には他に誰かがいることが多く、落ち着かない。ご飯もどこで食べていいか分からず、最初はコンビニのイートインにいた。けれどもなんとなく味気ないというか同じ職場の人にイートインにいる姿を見られたので恥ずかしくなり、最近は近くの公園で過ごしている。高台にある公園で、とても居心地が良い。昼間は散歩する犬を眺め、深夜は月を見上げ、遠くに見えるマンションのてっぺんで瞬く赤い明かりを眺めながらラジオを聴いたりしている。つい昨日なんかは、深夜の公園でコンビニで買ったカツ丼を食べた。深夜2時に公園でカツ丼を食べる未来なんてまったく予想していなかった。そんな夜勤の続く毎日にEMCの「東京で考え中」なんかを聴いてしまうとグッとくるのだ。深夜、いつもの公園から見える月。

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夜勤も多く、仕事のリズムがつかめていないので、映画も演劇もほとんど観れていない。唯一観に行けたのは、ローザス『A Love Supreme〜至上の愛』と小田尚稔の演劇『善悪のむこうがわ』の2つだ。ローザスは、ダンスについてまったく知識のない自分でさえその素晴らしさに打ちのめされた。ジョン・コルトレーンの「至上の愛」を音楽に踊るわけだが、冒頭の無音で踊る姿にすでに引き込まれた。いや、もはや踊ってすらいない、舞台の上にただ立つたたずまいそのものが美しかった。小田尚稔の演劇は、美術手帖VOLVOのコラボによる異色の公演で、会場もボルボスタジオ青山というショールームで上演された。場所が変わったからといって小田さんの作品にブレはなく、素晴らしい作品だった。僕は本当に小田さんの作品が好きで、いま一番面白い演劇はなに?と聞かれたら小田尚稔の演劇と言うだろう。

映画は観に行けていないが、国立西洋美術館へ展示「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代」を見に行った。 

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どうでもいいことだが、ずっとコルビジュだと思っていた。数年前までコルビジュって言ってませんでしたか?気のせいですか?いつからコルビュジエになったのだろう。展示は、キュビズムの影響を受けた後のコルビュジエの絵画がとても良かった。「多数のオブジェのある静物」のような、いくつもの物の重なりが透過されて描かれ、一つ一つの輪郭が曖昧でけれども綿密に計算された構図である作品に惹かれた。絵を見ながら、同じ場所にありながら重なりが曖昧になる表現が、演劇っぽいなーなんて思ったりした。

漫画は、田島列島『水は海に向かって流れる』が面白かった。もう、タイトルが抜群に素晴らしい。あとどのくらい続くのだろう。

仕事が始まって2週間が経ち、当たり前だがまだまだ慣れることはない。けれども、それほど辛いとか苦しいとかはなくて、この仕事なら続けていけそうな気もしている。見てわかる通り、日記の更新ペースは下がってしまっているのだけれどこれからも細々と書いていきます。来週も夜勤が何日かあるので、午前4時にぼんやりと外が明るくなっていくのを眺めるのだろう。

ずっと在り続ける

ゴールデンウィークが終わる。それと同時に、僕は約1年ぶりの社会復帰となる。1年ぶりの正社員。販売業なので、お店に立つこととなる。どうなるのだろうかという不安しかない。まあ、頑張るしかないのだけれど。

今週観た、ほりぶん『飛鳥山』がとんでもなく面白かった。ナカゴー、ほりぶんに関してはもう観てくれとしか言えない。終盤のぶん投げるような力技にどうしても印象を持っていかれてしまうのだが、物語を見ていくと、登場人物一人一人に心の動きがあり、ドラマのある話となっている。あんな演出や俳優の演技があり、さらにはドラマのある台本も書けてしまうなんて前々から言い続けているが、ほりぶん、ナカゴーは最高だ。それでいて、思いっきり笑えるのだから。

ストレンジシード静岡の初日へ行った。朝6時半にヒコさんの運転で東京を出発した。渋滞があり、最初に観る予定であったロロ『グッド・モーニング』の開演ぎりぎりに到着した。劇場ではなく、本物の駐輪場で上演される『グッド・モーニング』はたまらないものがあった。風で木が揺れ、蝶が宙を舞い、鳥のさえずりが聞こえる。その全てと虚構である演劇が調和し合っていた。数年前の、井の頭公園でのロロによる野外劇も良かったなーなんて思い出していた。その後は、ままごと×康本雅子を観た。うーん…となってしまった。次に観た範宙遊泳『フィッシャーマンとマーメイド』は、ポップでやわらかく素晴らしかった。演劇は、誰にでも開かれている作品であるべきだよなーと思った。早起きと立て続けの観劇に疲れてしまったのでストレンジシードは終わりにして、さわやかのハンバーグを食べに行った。1時間半ほど待ち、相変わらずの美味しさに幸せを感じた。何度食べても初めて食べたときの美味しさを味わうことができる。ハンバーグを堪能して、16時前に帰路に着くべくお店を出発した。ここからが地獄の始まりであったのだ。帰りは、僕が運転することとなっていた。高速に乗るとすぐに渋滞にハマってしまう。なんとそこから6時間、静岡から出ることができず永遠と運転席に座り続けることとなったのだ。こんな渋滞に巻き込まれたのは初めてだった。しかし、車内でアルピーのラジオをみんなで大笑いしながら聴いたのは幸福な時間だった。動くことのない車内で途切れることなく笑い続けていた。それでもさすがに睡魔に襲われ、都内へ入る前にヒコさんに運転を代わってもらい、後部座席で寝た。結局、家へ着いたのは深夜2時前だった。16時に出発して深夜2時に帰宅とは、静岡から東京への移動とは思えない。死んだように寝た。

最近読んだものは、ロバート・ウェストール『禁じられた約束』だ。とても素晴らしかった。しかし、序盤のボーイミーツガールの初々しさと終盤の辛さに、これは本当に児童文学なのか…となっていた。あまりにも辛すぎる。ちなみにこの作品の一節を宮崎駿は引退会見で引用している。

あと、日刊サイゾーの連載も更新されていた。光用千春『コスモス』と斉藤倫『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』についてです。

業田良家・石塚真一・浅野いにおが絶賛した気鋭の漫画家が描く「世界との出会い方」|日刊サイゾー (2019.05.02)

今日は、文学フリマ東京へ出展した。 

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とても緊張した1日になった。新刊、既刊ともに40部ずつ持っていったのだが、ありがたいことに完売した。たくさんの人が来てくれた。ブログ読んでます!であったり、前作買いました!などと言ってくださる度に、その人を抱きしめて感謝したくなった。まったく前情報を知らずに、その場で立ち読みをして買ってくれる方も何人もいた。もう僕はみんな大好きだ。ありがとうありがとうと買ってくださった方々がいるであろう方角すべてに手を合わせて感謝している。こだまさんや、『百年の孤独を代わりに読む』の友田とんさんも自分の本を買ってくださった。さらに、九龍ジョーさんにも僕の本の存在を知っていただいていた。こんな嬉しいことがあるのだろうか。サインを頼まれたのでサインをした。その時は、初サインです!と言ってしまったのだがよくよく考えてみると初サインは、歌人の木下龍也さんだった。

ずっとブースにいたので終わりがけに、駆け足で買いたい本を買いに走った。

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『Didion 02』『仕事文脈vol.14』『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』『ODD ZINE』を買った。ブースに来てくださって、ご自身でも出展されている方々が何人もいらっしゃったのですが、足を運びます買いますとか言いながらまったく行けなくてごめんなさい。なにかしらの方法があったら買います。

そんな感じで無事80冊を完売させた。今回の文フリの売り上げで、『やがてぬるい季節は』は、300冊を超えた。本当にありがたい。新刊の『日々はすべて穏やかな一日に』も今回の先行販売と予約分を合わせて100冊に到達した。嬉しい限りだ。まだまだ予約は受け付けているので、ぜひ。

https://miwa261.stores.jp/items/5cbb4427d211bf5411537a1b

明日から、働き始める。どうなるかは誰にもわからない。正直なところ、一度仕事を辞めているのでとても不安だ。まあ頑張るしかないと最初に書いたが、自分で作ったものがたくさんの人の手に渡り読んでもらえている、そんなことが辛いことがあってもこれからの自分の支えになるような気もしている。この支えは、以前の自分にはなかったもので、これからの自分にずっと在り続けるものだ。そう信じている。 

いつも通りの日々

今日は平成最後の日で、でも正確にはいつから令和になるのかよく分からない。24時からなのだろうか。そうなのだとしたら、令和になる前にこれを書き終えたい。平成を振り返るほど平成を生きていないので、最近のことを振り返る。

先日、藤子・F・不二雄ミュージアムへ行ってきた。恥ずかしながら初めて行ったのだが、とても楽しく、テンションが上がった。テンションが上がり、クリアファイルやフィギュアなど、グッズをたくさん買ってしまった。いまや家の本棚には、チンプイ、ドラミちゃん、ポコニャンがいる。

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ふと視線を上げた先に可愛いたちが鎮座していて日常が明るくなった。

ヒコさんに誘われて、所沢の「エミール」へシュークリームを買いに行った日もあった。所沢の「エミール」とは、オードリー 春日家御用達のお店であり、日向坂46も食べているシュークリームのあるお店だ。所沢へは、練馬から西武池袋線沿いをひたすら自転車を漕いで向かった。約3時間の道のりは、行ったことのない場所ばかりで新鮮だった。石神井公園の大きさとその周辺の家々の豪邸ぶり。あだち充作品で描かれる富士見台、清瀬や秋津の緑の豊かさなどなど飽きない風景が続いた。なんとか所沢へたどり着き、「エミール」でシュークリームを買った。

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オードリー がネタ合わせもした所沢航空公園で食べた。めちゃめちゃ美味しくてぺろっと食べてしまった。当たり前だが、来たからには帰らなくてはならず、再び自転車で3時間をかけて都内へ戻った。さすがに帰りはへとへとで、家に帰ってきてから死んだように寝た。最近は毎週のようにヒコさんに遊んでもらって楽しい。あの憧れのヒコさんがこんな身近な人になるとは思いもしていなかった。

最近読んだものは、光用千春『コスモス』と斉藤倫『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』だ。どちらもとても素晴らしかった。この2つの感想は連載で書いたのでいつか更新されるでしょう。『ぼくがゆびを〜』は装丁も素晴らしくて、誰が作ったんだろうなあと奥付を見たら名久井直子さんで、やっぱりなあ凄いなあとなった。この数日後、なんとなく本棚から引っ張り出してきて柴崎友香、田雜芳一『いつか、僕らの途中で』を読んだ。この本はとても好きな作品で、往復書簡なのだけれど、手紙と手紙の間に描かれたイラストが時間や距離も描き出して素晴らしいのだ。今回再読して、カバー裏綺麗だなあとか思って装丁を見たらこの本も名久井さんで驚いた。世の中の良い本全てに名久井さんが関わっているのではないかとさえ思った。

平成最後の日の今日は、午前中に『シャザム!』を観た。想像の何倍も面白くて観た後の満足感が大きかった。疑似家族作品の新たなマスターピースだ。映画館を出たら思わず「シャザーム!」と叫びたくなった。夜は、『柴田聡子の神保町ひとりぼっち 2019 Apr.』へ行ってきた。こんな狭い空間で柴田聡子の歌を弾き語りで聴けるなんて、これほど幸せなことはない。聴きながらずっと、なんて良い時間を過ごしているのだろうかと思っていた。メロディーはもちろんのこと、やはり歌詞がとんでもなく素晴らしい。好きな歌の「涙」も「遊んで暮らして」も「ジョイフル コメリ ホーマック」も聴けて嬉しかった。帰りは、神保町のボンディでホタテカレーを食べて帰った。良い平成最後の夜になった。

最後に少し告知を書きます。5月6日の文学フリマ東京で、新刊の日記本『日々はすべて穏やかな一日に』と既刊の『やがてぬるい季節は』を販売します。ブースはア-49です。

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既刊の『やがてぬるい季節は』には、こだまさん、佐久間宣行さん、ヒコさんにコメントをいただきました。

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こんな素晴らしい方々の言葉が自分の本の帯になるなんて夢のようです。当日は緊張しますが、頑張ります。いや、でも、緊張するなあ。

平成最後の日記は、告知でなんだか味気ないけれど、なんとか令和になる前に書き終わりそうだ。令和にもうしっくりきている自分がいる。

好きなものを好き勝手に

暖かい日差しのさす午後、自転車に乗ろうとサドルに触れると、とても温かかった。その時、市民プールの駐輪場やどこかの公園を思い出し泣きそうになった。夏の暑い日、自転車に乗っていった市民プールや立ち漕ぎをして向かった公園は、本当に記憶の中にあるのかそれともイメージの中だけなのか自分でも定かではない。ただ、太陽の光で熱を帯びたサドルの手触りは心地の良いものだった。

2週間ほど前に、台湾へ行っていた。台南と台北に行っていたのだが、台南はとても暑く、日中は30度以上あった。台北4回目、台南2回目なのであらかた観光はし尽くしているが街並みを見ながら歩くのはそれでも楽しい。もはや台湾へ散歩しに行っているようなものだ。今度ゆっくり旅行記は書くつもりなので少しだけ写真を載せておく。

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あまり台湾感のない写真ばかりだ。色々美味しい物も食べたので早く旅行記を書きたい。

台湾から帰ってくる飛行機の中でイアン・マキューアン『贖罪』を読み終わったのだけれど、あまりに素晴らしくて旅行の思い出が全て吹き飛んでしまった。読み終わった後、「物語」ということそのものについてずっと考えてしまった。台湾から帰ってきた翌日は、渋谷のHMV&BOOKSでいがらしみきお先生と齋藤陽道さんの筆談トークへ行った。スクリーンに映し出されるお二人の文字をひたすらに目で追いかけた。お二人とも聴覚障害という共通点があり、聴こえないぶん、見ることへの意識が飛び抜けているように思った。いがらし先生にサインをもらって帰った。

今週の火曜は大学へ行って社会人なども参加できる自主ゼミへ行った。贅沢貧乏の『ハワイユー』を映像で観た。録画映像の客の中に自分がいてなんだか不思議な気分になった。この自主ゼミは僕の卒業したゼミの教授が開いているもので、来週は贅沢貧乏の山田さんがゲストに来て、今後はゆうめいの池田さん、いいへんじの中島さん、演劇ジャーナリストの徳永京子さんがいらっしゃる予定なので楽しみだ。

水曜は、バイト終わりにダッシュで新宿のタワレコへ行き、カネコアヤノのインストアライブを聴いた。めちゃめちゃ人がいて姿を見ることができず、音だけを聴いた。「セゾン」がとても好きだ。「愛のままを」も良い。


カネコアヤノ - 愛のままを

土曜は、ヒコさんとそのお友達と都内をサイクリングした。要町のかえる食堂で黒坦々カレーを食べたら汗が止まらなくなって恥ずかしかった。

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都内を色々と走り回り、母校を案内したり「古書ソオダ水」へ連れていったりした。夕方に青山へ移動してayU tokiORYUTistのツーマンへ行った。ayU tokiOは個人的に好きな曲である「米農家の娘だから」を聴けて嬉しかった。ストリング編成だったので音も重厚で聴きごたえがあった。RYUTistはayU tokiOが提供した「心配性」がやはりめちゃ良い。


RYUTist - 心配性【Official Video】

アイドルのファンに若干怯えていたのだが、控えめな好感のもてるファンだった。自転車で帰宅して、ロロ三浦さん脚本のNHKドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』を見た。終盤はロロ節全開だった。夕方のバスの中でのセリフ、「好きなものを好き勝手に好きだって言える時間が一番好きだな」が良かった。

日曜は、自転車でアゴラへ行き、ホエイ『喫茶ティファニー』を観た。私たちの周りにある、見えているようで見えていない問題に真摯に向かっている、上演される意味のあるお芝居だった。様々なことを考えるきっかけになるし、この作品と時間をかけて向き合えば背景にある色々なことが見えるようになっていくような気がする。

面白かったラジオの話も書きたいが力尽きてしまったのでまた今度の機会に。霜降り明星のラジオと佐久間さんのラジオが面白いのは確かです。バラエティは、『相席食堂』が今週は面白さが復活していて安心した。時間が変わり、1回目2回目は途中で見るのをやめてしまうほどつまらなく、つまらなくて面白いみたいなことさえもなかったので辛くなっていたのだが3回目で息を吹き返した。

最後に、最近あまりブログを書けていなかったのは、新しい本を作っていたからだと言い訳させてください。前回の『やがてぬるい季節は』に続く日記本第2弾として『日々はすべて穏やかな一日に』という本を作りました。今回は、写真も載せたフルカラーです。先行発売を5月6日の文学フリマで行い、その後注文者の方にお送りします。もう予約販売は開始しておりますので手にとっていただけると嬉しいです。文学フリマについての詳細はまた後日お知らせします。以下が販売サイトのリンクです。

miwa261.stores.jp

宣伝ばかりで申し訳ないのですが、日刊サイゾーの連載も新たなものが更新されましたので読んでいただければ嬉しいです。かなり自由に書きました。

『ラジコフェス』『ソフィ・カル』『ハチクロ』~片想いと失恋をめぐる考察~|日刊サイゾー (2019.04.17)

坂の多い街

この前の日記に、来週には桜はもう散ってしまっているだろうと書いたが、意外にもまだまだ綺麗に咲いている。近所の公園の桜も、電車から見える目黒川の桜も健在だ。少し散った桜が地面にまばらに落ち、風に舞っているのも春のイメージとばっちり重なる。そして、川には花筏花筏、良い言葉だなあと思う。この言葉を初めて知ったのは落語であった。

つい先日、渋谷の円山町を自転車で通り抜けていたら、大学1年生の時に必修授業で同じクラスだった人を見かけた。朝の9時ごろ、女の人と手を繋ぎながら歩いていた。円山町という場所柄、まあそういうことなのだろう。この状況で声をかけられたらめちゃめちゃ気まずいだろうなと思って、呼びかけてやろうと声を出しかけたがやめた。彼はもう、大学を卒業しているのだろうか。平日の朝に女の子と手を繋いで円山町を歩くなんて、人生を何回繰り返しても到底僕には訪れない状況だ。

先週の土日は、実家に帰っていた。特にやることもないのだが、親がこちらへ来るというのでそれなら僕から行きますよと、高速バスに乗って帰省した。高速バスがサービスエリアで休憩をする時、自分の乗ってきたバスがどれか分からなくなるのが怖くてよっぽど膀胱に限界がきてるみたいなことがない限りバスから降りることができない。今回は、朝ごはんを食べずにバスに飛び乗ったので空腹で吐き気がして、なにかお腹に入れなければとサービスエリアで白いダースを買った。バスの中で貪るように食べた。

実家に帰ったからといって特にやることもなく、だらだらと過ごしていた。ベッドでごろついてツイッターを眺めていると驚くべきものが目に飛び込んできた。

なんと、こだまさんが自分の冊子を購入してくれていたのである。嬉しさと驚きでベッドから飛び起き、部屋でぴょんぴょんと飛び跳ね喜んでしまった。こんなに嬉しかったのは、中学の時に市のソフトテニス大会で優勝した時以来だ。人生なにが起こるかわからないなんて手垢にまみれた言葉を使いたくはないけれど、本当になにが起こるかわからない。この日は、普段一人暮らしではなかなか浸からない湯船に実家でゆっくりと浸かり、喜びを噛み締めた。日曜日に東京へ帰ってきた。

東京へ帰ってきた数日後、テレビ東京の佐久間さんのインスタに自分の本が載っていた。

www.instagram.com

連日憧れの方々に読んでいただいて、コメントまでいただけて、きっと今が人生のピークなのだろうと確信した。皆さんのおかげもあり、本の売り上げ冊数が200冊を超えた。もうこれ以上幸せなことは訪れない。そのうち、家の前でナイフで刺されるみたいなことが起きる。

ここ数ヶ月、べらぼうにおぎやはぎのメガネびいきが面白い。もちろん、これまでも安定して面白かったのだけれど、小木さんが最近よく話す犬エピソードが本当に好きだ。腹を抱えて笑ってしまう。オンエアバトル20周年スペシャルでもおぎやはぎは面白かった。おぎやはぎはこれまでもこれからもずっと最高なのだ。

最近のラジオの話をしだしたらもう本当にとまらなくなってしまう。根本宗子と長井短のANN0最終回で長井さん自作の曲が良かったこととか、アルピーのラジオのイノシシをモグラに変える話とか、新しく始まった霜降り明星のANN0のキャスパーのくだりとか、もう全てが面白い。佐久間さんのANN0は、緊張とANNをやれていることの喜びが入り混じっていて聴いているこちらもドキドキした。爆笑問題の太田さんが転んで頭を打った後のカーボーイも久しぶりに聞き応えがあった。

そして、なんと言っても今週の空気階段の踊り場「駆け抜けてもぐら 僕と銀杏の青春時代」がたまらなかった。鈴木もぐらさんは高校時代、銀杏の追っかけをやっていたらしく、当時向こうからも認識されていたという。高校生の時に、とあるきっかけで峯田さんに横須賀のハンバーガー屋に連れて行ってもらったり、遠征先のホテルに泊めてもらったこともあるというので驚きだ。ハンバーガーを食べた時のことを振り返って言った、「もちろん味なんてしなかったよ」の一言にグッときた。その後親交はなく、芸人になったことも伝えておらず、何年も経ち偶然居酒屋で再会した時に初めて芸人をやってると伝え、遂には単独ライブに来てもらうに至るわけだ。この話の何が良いって、最後に語られたもぐらさんの峯田さんに抱く想いが憧れと嫉妬であることだ。モテない悶々とした自分のことを歌っている!と思う一方で、ライブでは女子にキャーキャー言われている現実。それでも自分みたいな高校生にも親身になって接してくれていた峯田さんという存在。とても良い回だった。

ここ数週間の『勇者ああああ』が最高だ。熱海でのゲーム合宿がとても楽しそうで見ているこちらも幸せになる。きっと辛いのだけれど、友達とこういうのできたら楽しいだろうなーと思う。心底くだらない温泉に入るくだりでの、ハチミツ二郎による「来年の年賀状にしよう」に腹を抱えて笑った。あとは、「クールポコみたいな音しなかった?」もめちゃめちゃ面白かった。『相席食堂』は、ここ数回はべらぼうに面白いみたいな回はあまりなかった。

演劇は、アゴラでうさぎストライプ『ハイライト』を観た。あまりピンとこなかった。

今週の土曜日は、お昼に下北沢で玉田企画『かえるバード』を観た。とても面白かった。これまでの作風を保ちつつ次のステップを目指している感じがひしひしと伝わってきた。いつも見終わった後、あー面白かったで終わるのだが今回はズシリと来るものがあった。役者もみんなとても良かった。玉田さん、ますます仕事が増えるのだろうな。最近よく遊んでもらうヒコさんが偶然同じ回だったので、観終わった後にお茶をした。一保堂のほうじ茶を激押しした。そしてそのまま下北から代々木上原を経由し幡ヶ谷まで歩き、ウミネコカレーでカレーを食べた。僕はキーマとチキンカレーの相がけ。

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相変わらず美味しかった。ウミネコカレーからファミレスへ移り、23時過ぎくらいまでおしゃべりをした。芸能人のツイッターのフォロワー数を当てるゲームやウィキペディアの情報から人物を当てる遊びをして楽しかった。夜は『オールスター後夜祭』を見た。ずーっと面白かった。

日曜日は、聖蹟桜ヶ丘へ桜を見に行った。ずっと行こう行こうと思ったままなかなか足を運べず、5年越しぐらいに訪れることができた。とても暖かく天気も良く、最高の散歩日和だった。『耳をすませば』の舞台でもあるが、個人的にはラッキーオールドサンのファーストアルバムのイメージがある。駅を出ると、この日は桜まつりというものをやっていて人で賑わっていた。イベントの一環なのだろうか、子どもたちが地面に絵を描いていた。

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橋を渡り、いろは坂を登ると公園があり、桜が綺麗に咲いていた。

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桜を見ながら街を上から見ることもできるなんて素晴らしいにも程がある。さらにぐんぐん坂を登っていくと、求めていた景色が広がっていた。

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ため息が出るほど好きな景色だ。ずっと見ていることができる。こんなに素晴らしい景色も誰かにとっては日常であるのだなと思ったりもした。『耳をすませば』で見たことあるなーなんて場所を見ながら坂を登りきり、小さな公園のベンチに座ってしばらく桜を眺めた。帰りはちょうど夕焼けで綺麗な景色を見ることができた。ちなみにこの場所は、ラッキーオールドサンのジャケットと同じ階段。

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桜であったり、坂の上からの景色であったり、シンプルに美しいものには何もかもが敵わないなと思った。散歩日和の素晴らしい日曜日だった。

最後に少し宣伝になってしまうのだけれど、日刊サイゾーで月2回の連載が始まりました。こんな素人に仕事をいただけるなんて本当にありがたいです。精一杯書くので読んでいただければ嬉しいです。こちらが初回です。

www.cyzo.com

 

 

長い散歩

なんだか勝手に桜は4月に咲くものだと思っているけれど、3月末には咲くのだと毎年思う。今がきっと満開で、来週には散っている。

先週はあまり咲いていなかった。咲いていなかったけれど、花見という名目で高円寺から吉祥寺まで3人で歩いた。他の2人は僕よりも一回り年上で、お兄さんお姉さんという感じで安心する。高円寺に久しぶりに行くと、ミスドもモスも潰れていた。特に思い入れはないが、4年住んだ場所の変化に少しだけ心が動いた。高円寺の「七面鳥」でカツカレーを食べる。他の2人はオムライス。お腹が一杯になる。歩き始める。とりあえず、西友エスカレーターの遅さと地下の寒さを紹介してから僕が前住んでいたアパートを見に行く。誰かが住んでいる様子だった。そこからほど近いオードリー春日の家も見に行った。窓から顔を出して寝ているんじゃないかと思ったけれどそんなことはなかった。そのまま阿佐ヶ谷まで行き、タピオカミルクティーを飲んだ。1人では到底並べないし飲めないので嬉しかった。阿佐ヶ谷から南阿佐ヶ谷へ向かい、どこの街に住みたいかなど話す。住宅街を抜け阿佐ヶ谷住宅跡地に建つマンションを眺め、8000万という値段に驚きながら善福寺川へたどり着く。なんとも言えない咲き具合の桜を眺めながら、バドミントンなどで遊ぶ家族を偽物みたいだの言いながら歩いた。荻窪でお店に入り少し休憩をしてから再び歩き出す。西荻窪の古本屋で本を見て、越後鶴屋にいちご大福を買いに行くが売り切れ。吉祥寺を目指す。西日がとても眩しかった。寒さに震えながらなんとか吉祥寺へたどり着く。ココナッツディスクへ行った。1人はSaToAのミニアルバムを買っていた。星乃珈琲でその日の終わりを迎える。親族の結婚式の話や、人の家の子どもを見て笑うなどした。本当に疲れてへろへろになってしまったけれど、とても楽しい日だった。家に帰ってSaToAのミニアルバム『scrambled eggs』をApplemusicで聴いたらめちゃめちゃに良かった。

けっこう前なのだけれど、『スパイダーマン:スパイダーバース』を観た。誰がどう観ても面白い映画だった。アニメだと、Netflix『ラブ、デス&ロボット』も全ての短編が魅力的で、見ながら普通に声を出して「すげー、おもしれー」と言っていた。アニメーション表現は無限なのだなと思った。十数分の尺でこれだけ楽しめてしまえばもう敵うものはない。

『運び屋』も観た。もうクリント・イーストウッドがそこにいるだけで尊いイーストウッドの存在そのものが人生を体現しているようであった。何度も書いているけれど『グラン・トリノ』が中学生の時に人生で初めて1人で観に行った映画なのでイーストウッドは僕の中で特別なのだ。他に映画は、『バンブルビー』も面白かった。まぎれもない80年代スピルバーグ映画への目配せと、『ブレックファストクラブ』オマージュにどうしたって胸を打たれてしまう。

今日は坂元裕二『不帰の初恋、海老名SA』の満島ひかり×森岡龍による朗読を海老名市文化会館へ聞きに行った。前回の松岡茉優×太賀の朗読も素晴らしかったが今回もとても良かった。どうしたって満島ひかりの声になんと形容していいか分からない気持ちになってしまうわけで。歌を口ずさむ場面では、鳥肌が立ってしまった。そして、ラスト付近のあの台詞はやっぱり素晴らしい。好きなので引用する。

わたしの初恋は、わたしの日常になりました。例えば長めで急めな階段を降りる時。例えば切手なんかを真っ直ぐ貼らなきゃいけない時。例えば夜寝る前、最後の灯りを消す時。日常の中のそんな時、玉埜くんと繋いだ手を感じているのです。あの日バスに乗った時も君の手を感じていました。支えのようにして。お守りのようにして。君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。

帰りは、海老名サービスエリアに行きたかったのだけれどさすがに遠かったので、ららぽーとのフードコートへ行った。

最後に自費で作った本のことについてあまり書いていなかったのでここで少し。ありがたいことに最終的には150冊ほどが売れた。本当に嬉しくって部屋でひとり小躍りをした。不思議なもので、こんな世の中だからインターネットの方がたくさんの人に伝わるだろうと思っていたのだけれど、本という形にした方が多くの方に届き反応が貰えた。部屋で鬱々とした気持ちで書いていたものが知らない誰かの手に届いて、読んでくれている人がいる。本を買ってくれた一人一人に握手をしてお礼を言いたい。本当だ。けれども、安く販売してしまったのでどうしたって赤字で、人からお金を借りて増刷をしたし生活費を削って刷ったので親から家賃を払うお金を出してもらったりもした。次に作る本は色々と考えなければいけない。発送は大変だったけれど、ありがたいことに手伝ってくれる人がいたので一緒にファミレスで作業をして楽しかった。

そういえば、いつも行っていた近所のデニーズが改装工事で4月末まで閉まっていた。あの行き場のない日々を支えてくれたデニーズよ、これから僕はどこへ行けばいいのだ。だから今はデニーズより近いモスにいる。25時まで開いているので。

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相変わらずの日々

10日以上更新しなかったのは久しぶりだ。なにかが変わったようで、しかしなにも変わらない日々が続いている。転職先がなんとか決まったものの、5月からの採用ということで無為な日々の1ヶ月半ほどの延長が決定した。久しぶりの社会復帰はもうしばらく先になりそうだ。それでもこれまでの終わりのない延長期間に抱えていた不安に比べれば今は穏やかな気持ちだ。

相変わらず散歩はよくしていて、先週の日曜日はとても暖かく朝早く起きて自転車を引いたり乗ったりしながら4時間ほど彷徨っていた。住宅街には春の気配がそこら中に満ちていた。

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近所にいる犬は暖かい日差しを避けるように影の下で、へたりと座っていた。この犬がとても好きで、お店の前を通るたびに今日はいるかないればいいなと期待する。

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いつのまにか川沿いまで歩いてきていて、去年の秋にもこの場所へ来たことを思い出す。紅葉がとても綺麗な季節で、その下にいた老夫婦の写真を撮ったがピントが合わずうまく撮れていなかった。同じ場所で写真を撮る。今度はピントが合う。今は木々に葉はないが周囲の植え込みは緑を一層濃くしていた。

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長い散歩を終えて家に帰った。

最近観たもの聴いたものなどについて一つずつ。まず『ドラえもん のび太の月面探査記』は、なかなか面白かった。しかし、大人へ媚びた面白さだ。想像力の素晴らしさについてなどたしかに良いことを言っているがむしろその印象しか残らなかった。あとは、最近のドラえもん映画のポスターもあまり好きではない。逆張りとかではなくシンプルにウッとなってしまう。こういうのが好きなんだろみたいなのにもっともっと反発していかなければ。

ナカゴー特別劇場『駿足』は相変わらずのナカゴーで、くだらなくずっと面白かった。足がめちゃめちゃ速い人がたくさん出てくるお話。なんとなく良い話風に終わるのが最高だ。狭い空間での長距離を表現する演出も良かった。世の中、ナカゴーのように下らなくてもっともっと意味のないことが増えてくれればいい。そういった意味ではおぎやはぎのメガネびいきはずっと素晴らしい。先週の放送で長濱ねる卒業の話題に触れ、「このくらいの感じでラジオやってると、俺たちは絶対燃え尽きない。そもそも火がついてない」「燃え尽きる前に眠くなっちゃう」「息抜き坂を作った方がいい」などと言っていて最高だった。3週間ほど前の小木さんのドッグランの話も面白いのでどこかで聴けたらぜひ。「服を着ていない犬は公然わいせつ」「芝犬はふんどしが一番」などくだらない話ばかりをしている。

小田尚稔の演劇『是でいいのだ』も観た。再々演なので何度も観ている作品だが、3月11日前後の期間で上演していることに強い意志を感じる。そして、孤独や寂しさの肯定に胸を打たれた。

今日は青春五月党『静物画』女子編を観た。柳美里さんによる劇団青春五月党は、ふたば未来学園高校演劇部の生徒によって演じられた。静かでしかし力強い作品だった。文学的言葉と高校生の彼女たちによる言葉が響き合っていて美しかった。どうしたって被災地の高校生による演劇となれば飴屋法水『ブルーシート』を思い出さずにはいられない。どちらも個としての記憶や言葉を持った彼女たち彼らがそこにいる。照明や美術も素晴らしかった。

最後に最近の大きな出来事といえば、人生で初めて絵を買った。散歩をした日の午後だ。決して道端で声をかけられて連れ行かれた先で高額の絵を買ったのではない。SUNNY BOY BOOKSで行われていた、さとうさかなさんの「おもいだしきいろ」の展示を見にいった際に購入したのだ。絵を選ぶということは、自分の部屋を想像することなのだと初めて気がついた。どこに置けばよいか悩み、今はとりあえずそっと本棚に立て掛けてある。朝起きてベッドに腰掛け、目の前に絵が飛び込んでくる景色は新鮮で、毎朝ハッとする。本棚に小さい窓があり、その奥に世界が広がっているようだ。

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